嫌われ者に恋をしました
(4)目覚めのキス
隼人は約束の8時ちょうどに美乃里の部屋の前に立っていた。本当は居ても立ってもいられず、かなり前の時間に到着していたが、車の中で待ってから時間に合わせてやってきた。
夕べは雪菜が気になってほとんど眠れなかった。
いったいどんな状態なんだろう。別れると言っていたなんて、俺のことを嫌がったりするんだろうか?そんなの耐えられない。
ドアノブに手をかけると、鍵は開いていた。そのまま入っていいということだろう。隼人は思いきって玄関の扉を開けた。
隼人が部屋に入ると、雪菜は隼人の顔を見て驚き、目を大きく見開いて後退りした。
「やだ……、ヤダ!ヤダーッ!」
雪菜は叫び声に近い声をあげて、窓に向かって走り寄った。それを見た美乃里が驚いて雪菜を抱えた。
「雪菜!ここ3階!落ちたら死ぬよ」
「ひどいよ!なんで呼んだの?ミノリちゃん、裏切るなんてひどいよ!」
「裏切ってなんかいないよ、教えちゃだめなんて言われてないもん」
美乃里はずいぶん落ち着いた様子で対処していた。美乃里に抱えられた雪菜に隼人が近づくと、雪菜は首を振った。
「やだ、やだ、来ないで」
昨日たくさん泣いたのか雪菜の目は赤くて、それを見るだけで胸が痛くなった。
「雪菜……、一緒に帰ろう?」
「いや!一人で帰って!」
ここまで嫌がられるとは……。少しは予想していたが、こんなに思いっきり嫌がられるとダメージが大きくて落ち込む。
「何があったのか教えてよ」
「……」
雪菜は口を固く結んで下を向いた。