嫌われ者に恋をしました
隼人が瀬川と雪菜の関係を知ったのは、去年の1月だった。
経理課がある階には喫煙室がなく、上の階まで上がるのが面倒な喫煙者たちが、小さなバルコニーに灰皿を置いて吸えるようにしていた。
その日は、大粒の雪が降っていた。隼人は凍える寒さの中、そこまでして煙草を吸いたい自分をバカだと思いながら煙草に火をつけた。その時、バルコニーから見える非常階段から女の声が聞こえた。
見ると若い子が雪の中、コートも着ずに室内用の薄着のまま電話をしていた。あれは確か、営業課の小泉だ。笑わない人形みたいな子だって噂を聞いたことがある。
やたら顔を触りながら話しているから、何だろうと思ってじっと見ていた。
「そうなんだ。残念だけど仕方がないよね。……うん。お子さんのこと、だもんね。……瀬川さん、最近ずっとうちに来てくれないから。……ごめんなさい。あの、瀬川さん……ううん、なんでもない。ごめんなさい」
内容を聞いて、瀬川とその子の関係はすぐにわかった。隼人は以前、瀬川と販売促進課で一緒に働いていた。瀬川は既婚者のくせに女たらしで、当時からいろんな子に手を出していた。きっとあの子も捕まってしまったんだろう。