嫌われ者に恋をしました
でも、ドアを開けた途端、野生の小動物のように狙いすまして逃げようとしたから、仕方なく捕まえて、袋みたいに肩に担いだ。
ジタバタ暴れて「怖い!ヤダ!離して!」と言っていたが、これ以上雪菜を強引に引っ張るのはかわいそうだし、もうこの方が早い。
玄関に入って鍵を閉めた時には、安堵したのと疲れとで、もうぐったりしていた。
リビングにまで運んでソファに降ろすと、雪菜は無表情で床をじっと見つめた。
「さようなら、お別れです」
唐突にそんな台詞!グサリと胸に刺さる。
「何言ってるんだよ……。そんなの嫌だ!美生に会ったんだろ?何を言われたんだ」
「……」
雪菜は無表情で一点を見つめたまま、何も言わなかった。
美生と瀬川が結託していたことを伝えないといけない。そう思った時、パンッと大きな音が部屋に響いた。
ハッとしてみると、雪菜は大きく手を振り上げてもう一度自分の頬を叩いた。手を振り降ろした勢いで叩き落とすような、かなりの強さで叩いていた。
自分を叩くってこれか……。隼人は急いで雪菜の両手を掴んで押さえ込んだ。無表情な白い頬がわずかに赤くなっているのを見て、胸が痛んだ。
「俺の大事な雪菜を叩くなよ」
「……そんなの嘘」
「嘘じゃない。雪菜は俺の大事な雪菜だよ」
雪菜は無表情のままフイッと顔をそむけた。
「抱きたければ抱けばいい」
「!」
どうしてそんなことを言うんだ!いったい何を言われたんだよ!