嫌われ者に恋をしました
「最近美生から連絡があったのは事実だよ。それを黙っていたのは悪かった。でも、それ以上のことはないよ」
「嘘、今も続いてるくせに」
「美生と俺がか?続いてるわけないだろ!そんなこと言われたのか?」
「……」
俺と美生が続いているなんて、一緒に住んでいるのに、そんなわけがないだろう。どうしてそんな嘘を簡単に信じてしまったんだ。
「どうしてそんなの信じたんだよ。そんなの美生の嘘に決まってるだろ」
「……」
「教えてくれ、何を言われた?」
隼人が掴んだ両手を振ると、雪菜はぽろぽろと涙を流し始めた。
「あの人のことがまだ好きなんでしょう?私のことなんて遊びなんでしょう?」
「そんなわけないだろ!」
「私、隼人さんの出世のことなんて、全然知らなかった……。私なんかと一緒にいても、出世の役には立たないもの」
「は?」
これはまた、ずいぶんとおかしなことを吹き込まれているな……。
「瀬川さんみたいに偉い人の娘さんと結婚するんでしょう?私なんて、最初から遊びだったんでしょう?手近だったからなんでしょう?」
「瀬川と一緒にすんな!そんな結婚なんてデタラメだよ。美生とも続いてなんかいない。俺が愛してるのは雪菜ただ一人だけだよ!」
雪菜は、涙で喉まらせたような声を出した。
「うそ!私のこと……、背中の、跡のこと、あんな汚い傷、見たことないって……あの人と陰で笑って言ってたんでしょう!」
そんなこと!驚いて目を大きく開いた。
「俺がそんなこと、言うわけがないだろ!」
「うそ……」
雪菜は声をあげて泣き出した。
そんなことを言われたのか……!そんな、ひどいこと……。それで美生の言葉を信じてしまったのか。