嫌われ者に恋をしました
「聞いた話はそんなところでしょうか……」
「ふーん、それだけ?」
「はい……」
隼人は少し不満げに天井を見上げた。
「不思議なんだけどさ、偉い人の娘と結婚するのに、どうして俺は美生と続いてるの?おかしくない?」
「『彼、お互いに結婚していても私との関係はやめられないんですって』とおっしゃっていました。あとは『最近冷たくしてしまったから、面白くなくてあなたに手を出したのね』ともおっしゃっていました」
「それって俺、サイテーな男じゃん!そんなこと言われて信じたの?ダメだよ、もう」
隼人は盛大にため息をついて、雪菜の額にキスをした。
「ごめんなさい」
バカみたいにあの人の信じた私がいけない。でも、あの時は本当に辛くて悲しかった。
バカみたいな自分への後悔とあの胸の痛みを思い出したらすごく辛くなって、また叩きたい衝動が涌いてきたから、じっと目を閉じて衝動がおさまるのを待った。
「どうしたの?」
「……我慢しているのです」
「何を?」
「……叩きたいのを」
「……」
隼人は何を言わず雪菜を抱き締めた。
隼人さんには理解できない。言わなきゃ良かった……。きっとおかしな子って思ってる。
「どうして叩きたくなるの?」
「……わかりません」
「じゃあ、どういうタイミングで叩きたくなるの?」
「傷ついた時、でしょうか……?」
隼人がなぜそんなに興味を持つのか、不思議に思いながら雪菜は答えた。