嫌われ者に恋をしました

「傷ついた上に叩きたくなるの?叩いたら痛いし、もっと嫌じゃん」

「叩いてもそんなに痛くないし、叩くとすごく気持ちがスッとするのです。だから、傷つくと無性に叩きたくなるのです」

 こんなにペラペラと正直に話していいんだろうか。おかしなことを言って嫌われてしまうかもしれないのに。

「ふーん、スッとするのか……」

「……おかしい、ですよね?」

「いや、よくわからないから知りたいんだ。我慢してるって言ってただろ?」

「はい」

「我慢するってことは、やめたいけどやめるのが大変ってこと?」

「そうですね」

「そっか……、まだよくわからないけど、もしかしたら煙草みたいなもの、なのかもね」

「煙草、ですか?」

「煙草も無性に吸いたくなって、吸うとスッとするし、我慢しないとやめられないから」

 なるほど。

「……確かに中毒っぽいかもしれません」

「中毒ね……、じゃあ、一緒に我慢しよ。俺は頑張って煙草やめてるんだからさ」

 この人、私をわかろうとしてくれている。私に寄り添おうとしてくれているんだ……。

 その気持ちを痛いほど感じて、鼻の奥がツンとして目が熱くなった。雪菜はクルッと隼人の方を向くと、ピタッと抱きついた。

「どうしたの?もう一回してほしいの?」

「ううん、ぎゅーってしてほしいのです」

「……俺の話は軽くスルーしたね」

 失笑まじりでそう言いながら、隼人は強く強く雪菜を抱き締めた。
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