嫌われ者に恋をしました
自分から言っておいて、どんな答えが返ってくるのか考えていなかった。でも、暴力的じゃない、優しい子だなんて……。
私、暴力的じゃないって言ってほしかったのかもしれない。隼人さんはそんな私を理解して甘やかしてくれた。
隼人さんは私が抱える不安をいつもわかってくれる。いつも寄り添っているのを感じる。……一人じゃないのを感じる。
玄関の扉を開けて中に入ると、隼人はうつむく雪菜を抱き締めた。雪菜が落ち着くまで、しばらくそうして包むように抱き締めていた。
隼人に髪を撫でられて、部屋に戻ってソファに座ったら少し気持ちが落ち着いたから、小さくため息をついて、雪菜は疑問に思っていたことを口にした。
「……隼人さんは、出世に興味があるんですよね?」
「出世?そりゃ、まあね」
「なら、偉い人の娘さんと結婚しなくていいんですか?」
「……あのね、まだそんなこと言ってんの?俺を舐めるなよ」
一瞬課長の顔になったから、雪菜は少し身を縮めた。
「俺はそんなことする必要ないから。実力で十分。って言うか、今どきそんなものに頼っても出世なんてできないよ。瀬川が安易なんだよ」
「……そう、ですか」
隼人は雪菜の頬を両手で挟んで目を細めた。
「わかった?まだわかんない?」
「……わかりました」
「だいたいさ、遊びの相手を実家に連れて行って彼女ですなんて紹介しないだろ、普通」
考えてみたら確かにそうかも。私、バカな子だな、本当に。
「他に疑問は?何でも答えるよ」
隼人が何でも来い!みたいな顔をするから、もう一つ聞いてみたくなった。