嫌われ者に恋をしました
(5)許し
雪菜は9月いっぱいで住んでいたアパートを引き上げて、隼人の家に引っ越してきた。
瀬川はその後何事もなかったかのように静かに会社を去り、美生からの連絡もパタリと来なくなった。
そして、痴話喧嘩に巻き込まれた!と大騒ぎする美乃里には回らない寿司を奢れと言われ、隼人はなぜか美乃里の男にまで奢る羽目になった。
美乃里の男は美乃里にそっくりな体育会系だった。「なんか俺までスミマセン」とか言うなら、そんなに食うな!
でも、彼女がいなかったら雪菜は瀬川の餌食になっていたかもしれない。このくらいは許してやろう。
仕事はスケジュールが詰まっていて、毎日かなり忙しい。
残業も多くなってしまったが、雪菜は相変わらずテキパキと楽しそうに仕事をこなしていたから、そんな雪菜をつい優しい目で見つめている自分に気がついて目をそらしたりした。
バレたら俺のせいだな。
そういえば、片倉はバレたことをいいことに俺たちの前では堂々と手を繋いだりして、彼女を困らせて楽しんでいた。
俺たちをだしに使っていい気なもんだ。
忙しくてなかなか時間が取れなかったが、休みの日には雪菜が行ったことがないと言っていた動物園や遊園地に連れて行った。
もの珍しいと無意識で窓にへばりつく雪菜はかわいくてたまらない。へばりついてたね、と言うとふてくされるのもかわいかった。
もっといろいろ連れて行きたい。いろんな景色を一緒に見て一緒に感じたい。