嫌われ者に恋をしました
雪菜は甘えられると弱いらしい。俺だって雪菜に甘えられたら弱いけど、残念なことに雪菜はあまり甘えてこない。甘えるのが苦手なのかもしれない。
それでも時々「ぎゅーってして」と言って甘えてくることがある。あれはたまらなくかわいい。もっと言ってくれればいいのに。
雪菜は普通にただ甘えたい時と、辛くなって甘える時があるようだ。
雪菜は俺と約束してから、自分を叩いたことはない、と思う。でも、時々その衝動を我慢していることは知っている。我慢してもどうしても辛い時は、どうやら甘えてくるらしい。
雪菜は傷ついた時に叩きたくなる、と言っていたが、一人で何かをしていてうまくいかない時とか、思い通りにいかない時も我慢しているような気がする。
たぶん、傷ついた時に限らず、ストレスを感じた時に叩きたくなるんだろう。どういう原理かはわからないが、叩くことでストレスを発散させるのではないだろうか。
子どもの頃から、隠れて自分を叩いていたと雪菜は言っていた。そして、自分の力でやめていたという。自分の煙草を引き合いに出せば、かなりのモチベーションがないとやめることはできない。雪菜はかなり意志が強い人なんだと思う。
それでもダメな時に俺に頼ってくれるのはすごく嬉しい。甘えてきた雪菜を抱き締めると、しばらくの間ヒシッとしがみ付いて、満足したら見上げてにこっと笑う。
抱き締めたらストレスが解消されるんだろうか。
そんな、抱き締めるくらいでいいなら、いつでも甘えてくればいい。そうしたら、いつでも抱き締めてあげる。だから、雪菜にはもっと甘えてほしい。