嫌われ者に恋をしました
今回の仲末営業所は、前回とは違って資料は用意しておらず、所長もあからさまに迷惑そうに憮然とした顔を見せた。
会議室は使うから貸せないと言われ、応接室を借りてそこに資料を持って来て見ることになった。
面倒だが、経理の所に行っていちいち「何月分の資料を借ります」と断って持って来ないといけない。でも、雪菜は文句も言わず、淡々と資料を持って来ては、伝票をめくって確認作業をしていた。
「午後には備品台帳に移れそうか?」
隼人が聞くと、雪菜は顔を上げた。
「はい」
「じゃあ、また一緒に確認するから」
「わかりました」
雪菜は特に表情は変えずに答えた。
俺と二人きりになるのは嫌だろうか。でも、二人きりになりたかった。チャンスがあったらこの間は悪かった、と隼人は言いたかった。
昼になり、柴崎が「飯に行こう」と言い出したが、美乃里が「私たちは別で行くんで」と雪菜と二人でさっさとどこかに行ってしまった。柴崎と二人で飯なんて何も面白くない。
でも、美乃里と楽しそうに戻ってきた雪菜を見て、柴崎とつまらない時間を過ごしたことにも意味があったと思えた。
隼人は少し和んだ様子の雪菜を連れて、備品台帳の確認を始めた。