嫌われ者に恋をしました
「どうして、こんなもの……」
何気なく手に取った布は、赤ちゃんが履くような小さな靴下だった。それも片方だけ。両方揃っていないところがまたお母さんっぽい。
考えるより先に、ぽたっと涙が落ちた。
これって私の、だよね?どうしてこんなものとってあったの?私のこと嫌いだったくせに。
写真も手に取ってみた。古い写真。全部私の写真……。赤ちゃんの時、保育園の時、小学校の時。最後はたぶん中学の入学式の時。
何枚かはお母さんと一緒に写っていた。私とそっくりな顔をしたお母さんが笑顔で赤ちゃんの私を抱いている。
「写真なんかないって言ってたのに……」
ぽろぽろぽたぽた涙が落ちて止まらなくなった。涙でにじんで、写真がよく見えない。
隼人がさりげなく雪菜の背中を支えると、ママは箱ティッシュをポンと前に置いた。
煙草の火をグリグリと灰皿に押し付けて消すと、また新しい煙草に火をつけてママは静かに言った。
「ほら、あの子って人付き合いが苦手だったじゃない?人との距離感がうまくないっていうかさ。もしかしたら、あんたのこともどうしたらいいのか、わかんなかったのかもしれないね」
確かに、お母さんはすごく短気で、うまくいかないとお店もすぐに辞めて転々としていた。このお店は4年くらい続いていたから、すごく長い方だと思う。それにしたって……。
お母さんは私のこと、嫌いだったんじゃないの?本当は愛していたの?なんなの……?
もうっ!せっかくさっき一区切りついたと思ったのに。