嫌われ者に恋をしました
「たぶん……、そういう友達もいなかったからだと思います」
「ああ、なるほどね」
悪い友達に引きずられて不良になるパターンもなかったということか。雪菜は、本当に一人静かにひっそりと生きていたんだ。
「子どもの頃は友達もほしかったし、お母さんにかまってほしかったけど、表立って言えなくて……。中学の時には、もう諦めて本屋さんに入り浸っていました。高校生になってからは朝も夕方もバイトばかりしていたので」
「そっか。……そういえば、雪菜は進学校に行ってたんだね?やっぱり頭がいいんだな」
雪菜はバタバタと手を振った。
「いえ、隼人さんと比べたら、そんなたいしたことはありません」
「そんなことないだろ」
「本当です。公立はお金がかからないから入ったんです」
「仙台は公立の方が偏差値高いの?」
「えっと、そうですね、あの当時は。……隼人さんは公立じゃないんですか?」
「うん、俺は私立」
「そうですか、それはお金持ちですね」
そう言われてしまうと、親に感謝すべきだと今さら思ってしまう。雪菜は子どもの頃からそんなことを考えて生きていたのか。何も考えていなかった学生時代の自分を思うと本当に頭が下がる。
雪菜はしばらく窓の外を眺めていたが、疲れていたのか、うつらうつらと眠ってしまった。
進学校に行っていたのなら、なおのこと学歴なんて気になりそうなものだけど、雪菜は全く気にしない。そこには価値を置かない雪菜。俺をまっすぐ見てくれる雪菜。
そっと手を握っても、雪菜は全然起きなかった。