嫌われ者に恋をしました
「もう、お母さんのことを自分のせいとか思ってない?」
「はい……、そう思うんじゃなくて、お母さんの分も幸せになろうって思いました」
雪菜は隼人を見るとにっこり笑った。温まった雪菜は、頬や体がほんのり上気して眩しかった。
「そっか、良かった」
俺が必ず幸せにするよ。そう言いたかった。でも、それは今度にとっておこう。
本当に風呂で何もしなかったから、雪菜は意外そうな顔をした。
「してほしかったの?」
「ち、違います!」
「露天風呂でそんなことしたら、雪菜の声、誰かに聞かれちゃうじゃん」
「……」
「大丈夫、後でたくさんしてあげるから」
耳元でそう言うと雪菜はうつむいて赤くなった。俺の雪菜は本当にかわいい。後のお楽しみがますます楽しみになる。
雪菜は浴衣がすごく似合っていた。
浴衣を着て黒髪を上でまとめた雪菜は色っぽくて、誰にも見せたくないと思った。
館内を一人で歩かせたくなくて、どこへ行くにも一緒に行った。
雪菜はそんな俺の番犬ぶりには全く気付くことなく、食事の小鍋に火が入っているのを見てはしゃいだり、マッサージ機を使ってはしゃいだり、売店に並んだ土産を真剣に見比べたりしていた。
それをそばで見ているだけで、心から幸せな温かい気持ちになった。