嫌われ者に恋をしました

「今年度、補佐は小泉に担当してもらう」

 隼人はハッキリとした口調でそう言った。その途端、室内には安堵の空気が漂った。

「はい。わかりました」

 雪菜の平坦な低い声を聞き、隼人はうなずくと「じゃあ、この後少し残って」と言った。

 雪菜の隣にいた1年先輩の井上綾香(いのうえあやか)は雪菜の耳元で「いいの?本当に大丈夫?」と囁いた。

「はい、大丈夫です」

 雪菜は小さな声で綾香に答えた。

 定例会が終わり、みんなで長机の位置を元に戻してから、ぞろぞろと退室して行く様子を横目で見ながら、雪菜は窓際に立っていた隼人の元へ歩み寄った。

「お待たせしました」

 雪菜を見ると、隼人は少し柔らかい表情をした。
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