嫌われ者に恋をしました
(6)世界中から嫌われても
仙台旅行の一週間後、土産を持って実家を訪ねたら、母親と悠人が口を揃えて言ってきた。
「一緒に住んでて旅行も行くなんて、さっさと結婚すればいいじゃない!」
「早くしないとまた捨てられるよ~」
二人とも好き放題言ってくれる。まあ、言われるのは予想していたけど。
アルバムの写真も全て見終わってしまい、ひたすら喋り続ける母親に付き合って雪菜はにこにこ話を聞いていた。きっと疲れただろう。
それなのに「隼人さんのことをいろいろ教えてもらえるから、とても楽しいのです」なんて健気なことを言うからますます愛おしくなる。
「疲れたと思うけど、少し付き合ってほしい所があるんだ」
実家で夕食を食べた帰り、車を走らせながらそう言うと雪菜は首を傾げた。
「これからですか?」
「うん、平気?」
「それはもちろん」
「良かった」
向かったのは、前に乗ろうと約束したみなとみらいの観覧車だった。
本当はどこか眺めのいいレストランで食事をしてから、とかお膳立てをしたかったが、あまり時間がない。だから、今日伝えよう。
12月近くになると横浜もかなり冷え込む。仙台でやったように繋いだ手をコートのポケットに入れると雪菜は嬉しそうに見上げてきた。
土曜の夜の観覧車なんて混んでいると思ったが、思いのほかすいていて、それほど並ぶことなくすぐに乗れた。
この観覧車に乗るのは初めてだ。中は意外と広い。二人で乗って腰かけると雪菜は目を輝かせて外の景色を見つめた。
でも、今日は景色を見せてあげられない。俺だけを見ていてほしいんだ。