嫌われ者に恋をしました
「実は、まだ内示は出てないんだけど、昨日打診されてね。俺、海外事業部に異動が決まったんだ」
「……」
「EU圏の経営戦略を任せたいって言われて、ドイツに行くことになった」
「えっ?……エエッ!」
なにそれ!そんな……、えっ?どこ?なんかすごく遠い?
「雪菜は仕事ができるし、最近すごく楽しそうに仕事をしてるから、もしかしたら仕事を続けたいのかもしれないけど……、俺としては一緒に来てほしいんだ」
「……」
「向こうに行くのはたぶん2年か3年だから、その間は俺が一人で行くっていうのも選択肢としてはあるけど」
「そんな……」
「雪菜は仕事を続けたい?それとも俺と一緒に来る?……こんな選択を雪菜に迫るなんてズルいってわかってる。でも、雪菜がどうしたいのか正直に教えてほしいんだ」
隼人はそう言うと力強く雪菜を抱き締めた。こんなに強く抱き締めて、一緒に来てくれって全身で訴えているのを感じる。
私の答えなんて決まってるのに。俺について来いって言えばそれでいいのに。それなのに、こんな弱気なことを言うなんて。
仕事では駆け引きも完璧なのに、私の前ではヘタレになる隼人さん。でも、そういうところも全部愛してる。
「最近、仕事が楽しくてやりがいがあったのは事実です」
「……」
そんな、わかりやすいくらい不安を表に出さないで……。
「でも、それは隼人さんが一緒だからです。隼人さんと一緒に仕事をするのは本当に楽しい。隼人さんがいなくなったら、私はまた何もない毎日に戻るだけです」
隼人は腕の中から雪菜を離すと、じっと見つめた。