嫌われ者に恋をしました
隼人を見つめながら雪菜は、隼人に出会う前の日々を思い出した。
空虚な毎日。深海の底で光の届かない孤独。そんな自分を引き揚げて光を当ててくれた。
隼人さんに出会って、私はたくさんのことを知った。なにげない当たり前の毎日の幸せ。家族に囲まれる幸せ。信じ合うこと、愛し合うことの幸せ。共に生きる幸せ。
こんなに毎日ぴったり寄り添って生きているのに、一週間とかならまだしも、何年も離れて過ごすなんて耐えられない。そんなに長く離れることを考えたら、涙があふれてきた。
「そんな、隼人さんと離れるなんて耐えられない。ずっとそばにいたい。一緒に行くに決まってるのに、そんなこと聞くなんて!」
「ごめん……わかった。一緒に行こう、雪菜」
隼人は指で雪菜の涙を拭った。
「一緒に行く。ずっとそばにいる」
「うん、俺もそばにいてほしい……」
ふっと重なった唇は柔らかくて優しくて、いつもキスをしているのに、格別なキスのような気がした。
私この人に愛されている。本当に幸せ。私はこの人とずっと一緒に生きていく。
唇を離して見つめ合ったら、力一杯抱き締められた。でも、もっと抱き締めてほしい。
「ぎゅーってして……」
「これ以上?」
少し笑いながら隼人は強く強く抱き締めた。