嫌われ者に恋をしました

「ほら、彼女もいいって言ってるじゃない」

　所長はニヤニヤ笑って言った。腹立たしい！隼人がまた口を開こうとした時、雪菜が所長の方へ向き直った。

「私、とても嫌でした。もう二度とこんなことなさらないでください」

　雪菜が意外と大きな声でハッキリと言ったから、隼人は少し驚いた。でも、そんな言葉くらいじゃ、この年代の心には響かない。

「はいはい、今度はぶつからないように気をつけるよ」

　所長はニヤニヤしたまま、隼人に勝ち誇った目を向けて足早に去って行った。

「お前、いいのかよ」

　隼人が雪菜を見下ろすと、雪菜は小さくうなずいた。

「課長も言ってくださったし、私も言いましたから。もう大丈夫です」

「でもあいつ、全然反省してないぞ」

「もういいんです。課長、もうあんな喧嘩みたいなこと、しないでください」

　喧嘩みたいなこと、と言われれば確かにそうだったか。また、自分を止められなくなった。いつもならもっと冷静なのに。こんなの初めてだ。