嫌われ者に恋をしました
「課長がこんなに喧嘩っ早い人だとは思いませんでした」
「え?俺は、喧嘩っ早くなんかない……」
隼人は今までは喧嘩っ早いどころか、喧嘩なんてしないで、サラッとうまくかわしてきた。こんなに感情的になることはなかった。
でも、さっきの自分は明らかにおかしかった。あんな風に人に食ってかかるなんて。いつも一歩離れて観察してから動くのに、苛立って考えなしに動いてしまった。
最近の俺はおかしい。もう、理由は自分でもわかりつつあった。
その後、備品台帳の確認作業に戻ったが、雪菜は少し沈んでしまったし、隼人はもう「悪かった」とか、そんなことを言うような感じではなくなってしまった。
応接室に戻るとわいわいと楽しそうに総務課の二人がお喋りをしていて「お疲れちゃーん」などと気の抜けた声をかけてきたから、ますます気持ちが引いた。
隼人は苛々しつつ、監査の講評では、実際に記載漏れがたくさんあったから、より一層冷たくチクチクといろんなことを指摘するだけ指摘して、さっさと終わらせた。