嫌われ者に恋をしました

 隼人が柴崎と一緒に煙草を吸った後、社用車に向かうと、雪菜は美乃里と一緒に車の横に立っていた。そして、隼人を見つけると雪菜は恐る恐る近付いてきた。

「あの、今日はこのまま直帰してもかまいませんか?」

「え?いいけど」

「ありがとうございます」

 雪菜は美乃里の所に走り寄った。

「私たちここから歩いて行くんで」

 美乃里がでかい声でそういうと、その横で雪菜がこちらを向いてにっこり笑ったから、隼人は目を奪われた。

 笑った?

 その笑顔は輝いて見えた。一生忘れられない瞬間だった気がした。

「遊びに来てるのかねー、まったく」

「そう、ですね」

 しばらく心を奪われてしまって、柴崎の言った言葉に生返事になってしまった。

「松田君、ちょっと甘やかし過ぎじゃない?」

「まあ、仕事はきちんとやっているようですから」

「そんなこと言って、可愛くなっちゃった?」

「勘弁してくださいよ」
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