嫌われ者に恋をしました
柴崎のくせに、図星だった。もっと可愛がりたい。甘やかしたい。もう、上司としては完全に失格。
もう女なんてまっぴらだと思っていたのに。仕事だけに埋没しようと思っていたのに。雪菜のことになると自分を抑えられなくなる。
初めて食事に行った時、男に触られたと聞いて腹が立った。触った男に腹が立ったはずなのに、怒りで自分を抑えられなくなって、あろうことかその怒りを彼女に向けてしまった。
今日も触られたと聞いて、怒りに支配されていくのを感じた。他の男が彼女に触るなんて。彼女を傷つけるなんて。瀬川のこともそうだ。許せないと思うこの気持ちは何だろう。嫉妬、だろうか。俺が嫉妬をするなんて。
思えば、あの雪の日の非常階段で見た時からずっと気になっていた。あの後も煙草を吸いに行くたびに、つい非常階段に目をやってしまう自分がいたことを思い出す。
また、あの笑顔を向けてほしい。瞳に映る感情だけでなく、もっといろんな表情が見たい。彼女のことをもっと知りたい。
でも、そう気がついた時にはもう嫌われているなんて、俺はいったい何をやっているんだろう。