嫌われ者に恋をしました
「急な話で申し訳ない。部長とも話して、今年度は担当を固定にした方がいいって話になったんだ。知っていると思うけど、みんな監査の補佐をやりたがらなくてね」
「ええ、……まあ」
「営業所の監査は去年が試行で、本格的にスタートするのは今年からなんだ」
「はい、そう聞いています」
「去年、経理課職員には全員一度は同行してもらったけど、みんな必ず帰り際に『もう二度と行きたくありません』って言うんだよ。文句一つ言わなかったのは君だけだった」
監査の補佐ってそんなに嫌だっただろうか。
雪菜は少し首を傾げた。
確かに監査に行くと、営業所の人たちは歓迎している感じではなかった。むしろ、敵視。
営業所側からすれば、監査なんて粗探しだと思っているし、実際に何か問題があれば指摘するわけだから、それはそうかもしれない。
ひどい嫌味を言う人もいたし、質問してもまともに答えてくれない人もいた。でも、そのくらい別にどうということでもない。そういった風当たりの強い場面での対応に慣れているのは営業課に4年間いたからかもしれない。