嫌われ者に恋をしました
雪菜は怖くてずっとうつむいたまま、賀谷営業所をあとにした。車に乗り込んでシートベルトをすると、隼人は車を発進させてから雪菜に声をかけた。
「怖かった?」
「えっ?」
「脅えた目をしてる」
隼人が自分の目を見ていたなんて気がつかなかったから、雪菜は驚いた。なるべく感情が出ないように、じっと下を向いていたのに。
「いえ。あの、……あんなにいい雰囲気でいい人たちだったのに、ちょっと信じられなくて」
「あえての『いい雰囲気』だったのかもね」
「そうですね……。課長が話し始めたらガラッと空気が変わってしまったから……」
「そんなに怖かった?」
「課長は、平気なんですか?」
「平気っていうか、まあ、仕事だからね」
そう聞いて、雪菜の中に、さっき隼人が逆恨みされたらどうしようと思った恐怖がそろりと甦ってきた。