嫌われ者に恋をしました
入社してからの4年間、雪菜は営業課に所属していた。
もともと人と係わることが苦手で表情の乏しい雪菜には、営業は絶対に向いていないと思っていたが、求められていたのは笑顔の接客ではなかった。
当時、営業課の女子社員は雪菜一人だった。そんな営業課で雪菜に求められた役割は、男性社員の補助と苦情対応だった。
何かミスがあって謝りに行く際、女子社員を連れて行き一緒に頭を下げさせる、という理不尽な役割。
男性社員だけで行くより少しは先方も柔らかくなる、という理由だったが、先方によっては女子社員ばかりを攻め立てる人も多く、男性社員が自分に苦情が集中しないよう盾として連れて行っていると雪菜は感じていた。
男性社員のお茶を入れ、資料を用意し、苦情に同行する。そんな毎日を送っていたが、営業課に配属されて1年が過ぎた頃には、謝り方も板に付き、男性社員のイヤミやセクハラまがいの発言にも慣れつつあった。
そんな時、瀬川真一(せがわしんいち)と出会った。
販売促進課から異動してきた瀬川は優しい雰囲気で、おしゃべりな明るい男だった。
雪菜は瀬川の面影を思い出すだけで辛くなった。
……思い出したくない。
もう二度とあんな苦しい思いはしたくない。