嫌われ者に恋をしました

 雪菜は隼人の考えがわからず混乱していた。

 この間はひどいことを言ってしまったのに。課長も私のことを軽蔑しているみたいだったのに。それなのに、また食事に誘うなんて。

 見上げると、切実な瞳がじっと雪菜を見つめていて、吸い込まれて目が離せなくなった。

「えっと、……はい」

 瞳があまりにも切実で、つい行くことにしてしまった。どうしよう……。

「良かった」

 そう言って、隼人がふっと笑ったから、雪菜は驚いた。笑った顔なんて初めて見た。とても素敵な笑顔、と素直に思ってしまった。

「この間とは違う店に行くよ」

「……はい」

「俺、すっげー悪者になってると思うから」

「それは……私のせいですよね。すみません」

「いや、俺が悪いんだよ。じゃあ、行こう?」

 隼人がまた微笑んだから、雪菜はドキドキして目をそらした。

 課長がこんな笑顔をするなんて、知らなかった。いつも冷たそうで怖いのに。

 笑顔になった途端、違う人みたいに雰囲気が変わったから、どうしたらいいのかわからなくなって、思わずうつむいた。
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