嫌われ者に恋をしました

 隼人に「何食べたい?」と聞かれても、雪菜は「おまかせします」と答えるだけでやっとだった。

 前回の食事が最悪だったのもあるが、人と食事に行くのは、やはり緊張する。

 緊張したまま隼人について行くと、この間とは違う洋食屋さんに入り、隼人はメニューを雪菜に渡して「どうぞ」と微笑んだ。

 メニューを前に固まってしまった雪菜を見て隼人は苦笑した。

「迷ってるの?」

「いえ……」

「……俺と一緒だと緊張する?」

「あ、いえ、そういうわけでは……。あまり人と食事に来る機会がないので」

「ふーん」

 瀬川さんと食事に行かなかったのかって思ってるかな。でも、瀬川さんと食事に行ったことはなかった。行ってみたかったけど、外では会えないと言われて、その願いは叶わなかった。

「じゃあ、これで」

 雪菜はまた適当に、一番軽そうなパスタに決めた。

「パスタが好きなの?」

「い、いえ。そういうわけではなくて。一番量が少なそうだったので」

「ふーん」

「……」

「そんなに緊張するなよ」

 そう言われても難しい。

「困ってる?困った時の目をしてる」

「え?」

 隼人は嬉しそうに微笑んだ。微笑まれると目が離せなくなる。むず痒いような胸の痛みを感じて、雪菜は困惑した。
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