嫌われ者に恋をしました

「ご両親は?」

「亡くなりました」

「そうだったんだ。……ごめん、辛いことを聞いて」

「いえ」

 でも、やっぱりそんな話は嫌だったのか、雪菜はフッと表情を消してしまった。両親が死んで、いろいろと辛いことがあったのかもしれない。そう思ったら、もっとこの人を守りたいという思いが湧きあがってきた。

 もう、彼女への想いを止めることはできないだろう。心のどこかでブレーキをかけていたのに。自分は引き返せない所まで来てしまっていると感じた。

 その後は差し障りのない話をして、性懲りもなく何度も微笑みかけて頬を染めて嬉しくなって、今回は問題なく帰すことができた。

 本当は帰すことも嫌だった。背を向けて離れていく彼女の後ろ姿は、指の隙間からこぼれ落ちてしまう砂のようだった。

 また誘いたい。少しずつでいいから近づきたい。少しずつでいいから、心を開いてほしい。
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