嫌われ者に恋をしました
(6)立ち直れない
雪菜が監査課に来てから二ヶ月が過ぎた。
あの後、賀谷営業所は上層部で密かに問題として取り上げられ、隼人と雪菜は何度も調査に行くことになった。何度も調べるなんて、人の過ちを何度も暴いているようで、雪菜は精神的に辛かった。
営業所の人たちは一転して攻撃的で、あの時の穏やかな雰囲気とのギャップがいっそう雪菜を苦しめた。
でも、困った時や何か問題があると、隼人はすぐ前に出て、雪菜を矢面に立たせるようなことは絶対にしなかったから、そんな隼人の行動が頼もしくて嬉しくて、少し心配だった。
会社の方針で調査をしているのに、営業所の人たちは隼人たちが個人的に悪いみたいに攻撃をしてくることがある。会社の上の人も監査を悪者にすることがある。
そういうのを、雪菜は密かに気にしてしまうが、隼人は否定も肯定もせず「だから何?」と冷ややかに対応していた。
どうしてそんな風に、自分に悪意を向けられても平気なんだろう、と雪菜は内心ハラハラしていた。
結局、賀谷営業所の処分は社内で内密に行われ、静かにさりげなく営業所の人事異動が行われて、それ以上表に出ることはなかった。
「まあ、そんなもんだよ」
隼人は気にする様子もなくそう言ったが、課長があんなに悪者になったのに、と雪菜はせつなく思った。