嫌われ者に恋をしました
ジリジリと照りつける太陽を涼しい室内から外に見ながら、雪菜は美乃里とホテルのランチビュッフェに来ていた。
食べ放題なんて、そんなに食べられないからもったいないよ、という雪菜の意見は却下され、美乃里に無理やり連れて来られてしまった。
8月の土曜日なんて、混んでいないわけがない。人混みが苦手な雪菜は、人が多いだけで既に疲れつつあった。
「だって、3割引きの割引券だよ!しかも女性限定なんて、絶対使わなきゃ!」
「まあ、そうだけど」
「来たことなかったんでしょ?食べ放題」
「うん」
「いいじゃん、楽しんでいこうよ」
少し強引だけど、雪菜は美乃里の気遣いが嬉しかった。美乃里は雪菜が人見知りの上、あまり外を出歩かないことを知っているから、時々こうやって連れ出してくれる。
人と関わらないようにしようとする雪菜の扉を、平然と突き破ってくる美乃里が、雪菜は本当に不思議だった。美乃里は、雪菜に人と関わってもいいのかもしれないと思わせてくれる。
美乃里は人の合間をぬって、山盛りの皿を持ってテーブルに戻ってきた。そして、申し訳程度にしか皿に乗せなかった雪菜を見て、驚愕の表情をして見せた。
「やだ、雪菜!それしか持って来なかったの?すぐ取りに行かなきゃいけないじゃん」
「え?でも、いいよ。足りなかったらまた行くから」
「食べ放題なんだから、遠慮したってしょうがないよ!」
「うん、わかってるよ。お料理よりデザートをたくさん食べたいんだ」
「あっそ、なるほどね」
ローストビーフをガツガツとほおばり、グイグイと飲物を流し込みながら美乃里はうなずいた。