嫌われ者に恋をしました

「松田課長は雪菜のことが好きだから、食事に誘ってるんだと思うけど?」

「……そう、なのかな」

「そうじゃなきゃ、食事になんて誘わないよ?それにしたって、本当に食事だけ?手の一つも握らないの?松田課長もストイックだねえ」

「そういうつもりじゃないんだよ、きっと」

「何言ってんのよ!雪菜の雰囲気が堅いから、手が出せないんだよ。雪菜っていつも会社では低い声だけどさ、私とこうやって喋ってる時みたいに、普段から可愛い声で喋ってみなよ。松田課長だって、きっといちころだよ!食事だけじゃ済まないよ!」

「それはちょっと……」

 美乃里は首を傾げて、雪菜をのぞき込んだ。

「雪菜は松田課長のこと、どう思ってるの?好きなの?」

「そんな、……わからないよ」

「嫌いじゃないんでしょ?」

「それは、そうだけど」

「ちょっと意識してみたら?好きになっちゃうかもよ?」

 美乃里がニヤニヤしながら言った言葉をじっと聞くと、雪菜はうつむいて考え込んでしまった。

「やだなー、そんなに考え込まないで、気楽に考えてみなよ」

「……やっぱりダメ」

「ん?」

 雪菜は美乃里を見上げた。

「やっぱり、人と関わるのは怖いの。きっと迷惑になるから」
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