嫌われ者に恋をしました
「もういいんだよ、断られたから」
「あっちゃー、一歩遅かったかー。嫌な予感がしてたんですよねー」
「なんだよ、からかいに来たのかよ」
隼人が苛々しながら言うと、美乃里は大げさに首を振った。
「違いますよ!そうじゃなくって!雪菜が課長に気があるのは間違いないんですよ」
そんなわけがない。外で会うのも断られたんだから。
「もういいよ」
「諦めないでくださいよ!雪菜が断ったのは、課長を嫌ってとかじゃないんです。そうじゃなくて、雪菜っていつも人と関わるのを怖がるっていうか、自分が関わると迷惑になるって思い込んでるんですよ」
それは瀬川のせいだろうか。彼女のせいで瀬川は離婚でもしたんだろうか。でも、そんな噂は聞いていない。
「それは……」
「雪菜のお母さんの話って、聞いてます?」
「は?」
思いもしない方向に話が向かったから、唖然として煙草の灰を落としそうになった。
「聞いてないですか?」
「お母さんって、もう亡くなってるんだろ?」
「ええ。雪菜も詳しくは話してくれないんですけど、どうやらお母さんの影響であんな風に人と関わらないみたいなんですよね」
それは考えてもいなかった。きっと辛かろうと思って、両親の話はなんとなく聞けないでいた。