嫌われ者に恋をしました

「どういうこと?」

「ずいぶん前に聞いたことがあるんです。お母さんに『あんたは生きてるだけで迷惑だから人と関わるな』って言われたって」

 それはずいぶん酷いことを言う親だ。そんなことを言う理由がわからない。

「それは酷いね」

「雪菜、本当は人と関わりたいんじゃないかと思うんです。だけど、そう言われて育った呪縛みたいなものがあって、逃れられないでいるみたいな気がするんですよね」

「そう言ったって、笠井さんとは友達として関わってるだろ?」

「私はそういう壁を正面から突き破って行くタイプなんで!」

 そうだろうな。見たまんまだ。……瀬川もそうやって彼女の壁を突き破って近づいたんだろうか。

「俺はそういうタイプじゃないから」

「そんなこと言ってたら一生雪菜をゲットできないですよ?」

「だから、もういいんだって」

 美乃里は苛々したように頭を掻いた。

「雪菜には幸せになってほしいんですよ。課長は見た目と違っていい人みたいだから、こうやって私が一肌脱いでるんじゃないですか!」

「おせっかい娘」

「この年で『娘』なんて言ってもらえるのは嬉しいんですけど、言い方がオッサンですよ」

「いいよ、オッサンだから」

「オッサンなら早くしないと他の誰かに雪菜を取られちゃいますよ?」

 そんな、他にも候補がいるみたいな言い方。ますます気分が落ちる。
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