嫌われ者に恋をしました

 うるさい二人が消え、隼人と雪菜の二人きりになると、しばらく沈黙が続いた。

 さっき永井と何があったのか聞きたい。聞いてどうするわけでもないが、気になって仕方がない。

「あのさ」
「あのっ」

 二人同時に同じようなことを言ってしまい、息を飲んだ。あんなに長い時間沈黙が続いていたのに、どうしてたった一言が同じタイミングになるんだろう。

「……どうぞ」

「いえ、課長からどうぞ」

「……」

 そう言われると言いづらい。隼人はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。

「さっき、……何喋ってたの?」

「え?」

「永井と、何喋ってたの?」

「飲みに行かないかって言われて、お断りしました」

「ふーん。なんか、固まってたみたいだったから」

「あ、それは、えっと」

「まさか、触られたりしたんじゃないかと思ってさ」

「えっ!い、いえ、……少し肩に触れられただけです」

 やっぱり!どうしてこの人はそうやって触られてしまうんだろう。おとなしそうだからか?触れても騒がなそうだから?人形みたいに感情が見えないから?何にしても許せない。
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