嫌われ者に恋をしました
「まったく。彼女がいなくなったら痛手だよ?来て1年しかたってないのに完璧に仕事を把握してるからね。他の子とお喋りしてさぼったりもしないし」
「本当に助かります。きちんと経理を把握している子じゃないと連れて行けないので」
確かに雪菜の仕事ぶりは完璧だった。余計なことはせず、いつも静かに淡々と仕事をこなしている。
「まあ、小泉が嫌がらないのは当然としても、なんでみんな、ああも監査を嫌がるかね」
「彼らにとって監査は業務外の仕事ですし、行った先の営業所でイヤミの一つでも言われるからでしょう。今までこういう形で監査に入ることはありませんでしたから、営業所の皆さんもかなり戸惑っておられるようですから」
「やっぱり抵抗、凄いんだ?」
「まあ、それなりに」
「ふーん。まあ、二人は似た者同士だから、ちょうどいいじゃない」
二人って彼女と俺?俺はあんな無表情じゃない。怪訝な顔をすると片倉はニヤリと笑った。
「二人ともクールな感じでさ、監査にはもってこいなんじゃないの?」
「はあ、まあ……。では、決算が終わったら小泉は監査に来てもらうということで、すみませんがよろしくお願いします」
「おう、わかった」
隼人は片倉の「ニヤリ」が腑に落ちなかったが、無理やり会話を終わらせた。