嫌われ者に恋をしました

 その後は話すこともなく、雪菜はずっと外を見ていた。

 前にも思ったが、彼女は車から外を眺めるのが好きみたいだ。瀬川とドライブに行ったりしたんだろうか。そんな時、彼女は笑顔だったんだろうか。

 隼人はまた、ため息をついた。ダメだ、ダメだ。そんなことを考えて、また女々しい俺が出てくる。

 会社に着いて車を返すと、資料を持って課まで帰ってきた。

「片付けておきたいことって何でしょうか?」

「え?」

「休みの前に片づけておきたいことがあるっておっしゃっていたから」

 ああ、そうだった。別にそんな仕事はない。

「いいよ、明日やろう」

「そう……、ですか」

 二人ともうつむいて黙ってしまった。なんだろう。中学生みたいだな、これ。

 でも、俺は中学生じゃなく、もういい大人なわけで、ここはやっぱり誘うべきだろう。

「今日は、用事ない?」

「……はい」

「じゃあ、今日は来てくれる?」

 そう言って、なぜか流れるように右手を差し出してしまった。何やってんだ、俺。わざわざハードルを上げるようなことをして。でも、今さら差し出した手を引っ込めるわけにもいかない。
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