嫌われ者に恋をしました
「……はい」
雪菜は小さくうなずくと、恐る恐るゆっくりそっと、指先を隼人の指先に触れるように乗せた。
雪菜が触れた瞬間、隼人は指先から喉元にかけて痺れが走ったような気がした。思わず反射的にギュッと握り締めたくなったが、なんとか抑えて、軽く優しく指先を握った。彼女の白く細い指は、思いのほか柔らかくて温かかった。
「良かった。じゃあ行こう」
隼人が微笑むと、雪菜も少しはにかんだように微笑んで赤くなったから、ますます目が離せなくなった。
こんなに初心な反応をするなんて、とても不倫をしていたとは思えない。本当に瀬川と付き合っていたんだろうか。でも、それは間違いない。本人も別れましたと言っていた。
この人の背景にすぐ瀬川を思い出すのは悪い癖だ。女々しい自分を思い知る。
ついうっかり手を差し出してしまったとはいえ、結果的には彼女の気持ちが俺に向いていることがわかったから、良かった。
いつまでも手を繋いでいるわけにもいかず、すぐにそっと手を離したが、離した途端にまた握りたくなって、たまらない気持ちになった。