嫌われ者に恋をしました
雪菜は一礼すると、パタパタと階段を駆けあがった。部屋の前まで来ると振り返って、もう一度頭を下げたから、隼人は手を振った。
雪菜が家の中に入るのを見届けてから、隼人は駅に向かって歩き出した。
瀬川よりも好きになってほしいも何も、まだ付き合ってもいないんだ。ほんの少し彼女の気持ちが俺に向いているというだけのこと。
隼人はため息をついて自嘲するように少し笑った。
今日はあんな風に怖がらせてしまったのに、よく来てくれたな。どうしていつもあんな風に自分を止められなくなるんだろう。不器用にも程がある。そもそも、俺はこんな不器用だっただろうか。
俺はもう完全に小泉雪菜に溺れているんだ。彼女のこととなるとおかしくなる。自分が自分でいられないのか、これが本当の自分なのか。
こうなったらもう、溺れるだけ溺れて、ダメな時は砕け散ろう。その時はまた落ち込んで、仕事に没頭でも何でもすればいい。
今日も笑いかけたら少し赤くなって微笑み返してきた。あの瞬間にはたまらない幸福感がある。
今度は電話番号を教えてもらおう。そして休みの間、一日くらいは会えないか、またチャレンジしてみよう。