嫌われ者に恋をしました
嬉しいけど、苦しい。
私が関わって、課長に迷惑をかけてはいけない。でも本当は、どんな迷惑がかかるのか、わからない。
私の存在はお母さんにとって迷惑だった。おばあさん達にも迷惑だった。わかっているのはただそれだけ。
本当は、人と関わりたくないのは迷惑をかけるから、だけじゃない。関わって、そばに居ることがあたり前になった人が、目の前からいなくなることが怖い。
私はお母さんから言われた言葉を盾にして、本当は自分から逃げている。
取り残されて一人きりになる寂しさを知っているから、最初から関わらない方がいいと思ってしまう。
私はただ臆病で、自分を守りたいだけの弱い人間だ。
でも、課長は瀬川さんとは違うのかもしれない。課長は家まで送ってくれたけど、本当に普通に送ってくれただけだった。家に入りたいって言われるかと思ったのに、普通に手を振って帰っていった。
課長は時々不機嫌になるけど、本当はすごく優しい人だと思う。みんなが言うような冷酷な人じゃない。どうして、婚約者が彼のもとを去ったのか、私にはわからない。
婚約者はどんな人だったんだろう。課長はまだ、婚約者のことを想っているのだろうか。少しだけ私の方を見てくれているけど、でも私は最初のイメージが悪かったみたいだし。不誠実な女だって言ってたし。やっぱり私なんて、恋愛の対象じゃないのかもしれない。
どうして最初、あんな言い合いをしてしまったんだろう。言い合いをするなんて、本当に久しぶりだった。お母さんと最初で最後の言い合いをして以来。
思い出したら、後悔で胸がいっぱいになって悲しくなった。