嫌われ者に恋をしました
瀬川は忘年会の帰りに「遅いから危ない」と言って、親切に家まで送ってくれた。
「家に入れてくれないの?」と言われた時、雪菜は一瞬怖さを感じたが、断って気まずくなることの方が気になって、断れなかった。
でも、瀬川は雪菜のそういう断れない性格を利用した。雪菜は無表情な冷たい子だと言われていたが、別の見方をすれば、真面目に仕事をこなす、思ったことも言えない大人しい子で、瀬川にとっては格好の餌食だった。
雪菜はそれまで、誰とも付き合ったことがなかった。だから、お茶を入れようと台所に立った時、後ろから抱き締められて、耳にキスをされ、その唇が首筋に落ちていっても、何も抵抗できなかった。
何も知らない雪菜を手に入れることなんて、瀬川にとっては簡単な事で、流れるように雪菜は瀬川の手中に落ちてしまった。
瀬川と関係を持ってしまったことに、雪菜は激しく混乱した。
でも、瀬川は「愛してる」とか「こんなに大切な人は初めてだ」とか、今まで雪菜が一度も言われたことのない、耳に甘い言葉をたくさん囁いて、雪菜は絡めとられるように溺れてしまった。
雪菜は瀬川の言葉を素直に真正面から受け止めて、本当に瀬川を信じていた。
でも、甘い時間は最初の頃だけで、あっという間に瀬川は変わっていった。