好きからヤンデレ




空実side





夜が来ると

必ず

朝も来て昼も来て...


ぐるぐる毎日が回っている。






眩しい光を捉えた瞼が上がる。



〜〜♪




携帯から音が響いた。


モーニングコールみたいに。


智治かな?
なんて思いながら、
まだ、完全に起きていない上体を起こす。



「......はぃ」



「....空実ちゃ...ん?」


「えっと?」


「空実ちゃんだよね!」





電話の向こうからは、聞いたことのない声が私の名前を何度も読んだ。


どこかなつかしいような、そんな声。


「...はい、そうですけど。」


正直電話の相手は
誰だかわからない。
もしかしたら最近被害拡大中の詐欺かもしれないなんて思い、素っ気なく対応する。



なのに、
意外な答えが私の耳に入ってきた。



「城田です。」




ぇ?



聞き間違えだろうと、聞き返す


「空実ちゃん、忘れちゃった?城田斗真の母親です。」


あ、
あぁ



忘れるはずなんか


ない。



忘れようと


したけど

努力、したけど。



「覚えてます。

とう...まさんのお母さん」




斗真


その名前を口にした時


胸が締め付けられた。





クン



痛い。


胸に重りが落ちた。


喉に大きな塊がつっかえてすごく切ない。

この気持ちはなんなんだと問いかける。
問いかけるほど重りは重くなって、この気持ちの本意が姿を現す。


私には智治がいるのに。

こんなにも苦しいなんて


不謹慎だ、私の体。






「そうよ!
久しぶりね空実ちゃん。元気にしてる?」


ろれつのまわらない私に対して彼女はきさくに話しかけてくる。


どうして...?


どうして今更?


「...ごめんなさい。今調子が悪いんです、切ってもよろしいですか?」


振り絞るように、喉から声を出す。
辛い状況なのに電話の向こうは花が咲いた彼女がそこにはいた。


苦しい。
こんな自分に嫌気がさす。


「空実ちゃん?大丈夫?」


「ぁあ...ぇっと。あの...だいじょぶ...です。はい。」


「心配だわ、おばさん。あのね、今ちょうど空実ちゃんの家の近くに来てるの。どう?」


どう?

の続きはきっと

会わないか?

なんていうのだろうか。






やめて。よしてよ。


あったら思い出してしまうのに。
分かってるはずなのに。

今ここで、会ったら


幸せなはずの日常が壊れるのではないかって


そう、100%頭で理解してるつもりなのに


私はバカだ



「下。したで......待ってて...ください」



ゆっくりと足が玄関へ向かって。


私は、まだぼけている体のまま走り出した。



.....これは、何かの罰ゲームだろうか?


これは、




なに?









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