好きからヤンデレ

「ふーん」


そう言った彼は、なんとなしか
全てをわかっていたように見えた。


「それでね、私その時、今考えたら頭がパンクしちゃうからわからないんだけど、とても憎い思いを胸にしてたと思うんだ。」


「それで?」


「その子は次の日に小さな箱に入れられちゃうの。」


「小さな箱?」

不思議そうに私の瞳をずっと見る彼だけど
私は、目を知らさずに語った


「それから、その子は小さな罪を犯す。血に染まったのと同じように。」


「罪?」


「自業自得ってことだよ」


「怖いね。」


そう。
そうだよ斗真。


怖い夢だった。



ぎゅっと抱きしめる手に力を入れる。



「だけどね、今は全然怖くないっ!斗真がいるもん。斗真は私が好きだよね?」


「っ!?」


目を大きく見開いた彼。


何かから解かれたように私の肩におく手が緩んだ。


恥ずかしがり屋の斗真なんだから。



「私たちは両思いだよね?」


再度、確かめるように愛を確認する。


「...。」


真っ赤な顔をした彼。

可愛くてカッコよくてずっと見てられる。


「いいよ。照れなくて。ずっと好き。斗真も私が好」



そう口にした時、


ピシャンと
鋭い音が響いた。



ポツポツと私の頭に、彼の顔に


水玉が落ちていく。




「雨。寒いね。」


雨は冷たい。
寒いこの世界に
あったかく光る二つの光。



さっきよりまた、私は斗真に抱きよった。











はずだった。






パシッ





ぇ?


真っ赤な顔をしたはずの彼がみるみるうちに白く幽霊のように


「あ...ぁ。ごめ...ぁ」


もがきだす。


だんだん早くなる水の音。



私を可愛い可愛いと
ずっと頭を撫でてくれた手が

私を突き飛ばした。



「とう...ま」


「ぁっ。ちがっ。ごめっう...うっ....!!」



頭を抱えて、水に濡れた彼は私からだんだん離れるように走り去る。



また。


同じ雨の日。



またまたまた

突き飛ばされて。




「斗真!?斗真!?」




今度こそ、斗真をたすけてやらないとっ!


そばにいてやれるのは私だけで!

斗真は私に追いかけて欲しくて
きっと気づいて欲しいんだ!

斗真は絶対
私を好きなんだから!!!


追いかけなきゃ。

斗真が一人で苦しんで泣いているのはダメだから。





「待ってて。」



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