好きからヤンデレ
音がした方を振り返れば、あったはずの黒い車の姿はなかった。
.........『赤』が現れたか。
「...智治......か?いる....のか。」
走り去った車はもう二度ともどってこない。
自分の喪失さに苛立ちを覚えたとき、
廊下の先からかすかなこえがした。
........!?
.....先輩!?
血が点々と続く廊下を靴のまま急いで上がると
黒いコートから湖のように広がる赤い水溜り。
「刑事!?」
うそ.....まさか...
そんな。
相手は
「やられた...くっ、追いかけ....ろ。城田さん.....が、連れて....行かれた。」
ボソボソと苦しそうに俺にうったいかける。
いやだ....見捨てるなんてそんなこと
「無理で....す。俺、また失敗を犯してしまう!!!!!!」
「なに弱気になってんだ!?.....お前が......やらな...きゃ、だれがやる?」
先輩の言葉ズシリと胸に響いて俺を苦しめた。
ヤンデレ
それは、人をも傷つけてしまう。
彼はそう言って笑った。
「......了解です。救急車は呼びましたから、ここで待っててくださいね?」
俺は、先輩の傷口をマフラーで縛る。
これは....刃物か何かか?
許さない。
こんなことして....こんなふうに傷つけるなんて
許しわけがない。
廊下を急いで走ると、玄関ではたりと足を止めた。
血のようなものは、よく見れば足の形をしていて、
小さい。
それはきっと、小柄の人。
スタイルがよくモデルをしてらっしゃる城田さんは、背が高くて、どちらかといえば小柄ではない。
......しかもこれは裸足だ。
「空実」
玄関から雪の上にかすかに見える赤いものは、
おそらく俺が裏に回っている間につけられたもの。
車が走り出すタイミング。
「......あいつらは一緒か。」
『赤』の斗真と
『赤』の空実はくっつくことは
.........おそらくはない。
また、どちらかが怯えて、
自分のした事に気付かずにまた犯罪を犯す。
止めなければ。
俺はあいつらを守らないければならないのだ。