好きからヤンデレ

過去


空実said





私は夢を見た。

大好きな智治が驚いた表情で私の目の前に立っていた。

びっくりした。
私は彼を愛していたはずなのに
なぜか......心にぽっかりと穴が空いていたような気がしたんだ。


私の心は.......そのとき何をしようとしていたかなんか

何も覚えていない。




その後
彼は私を撃った。




バンっ





大きな音とともに私の体はふわりと何かに包まれた。




白い冷たいそれは綿のように柔らかくて、何も痛くなんかなかったのに。






心は悲鳴をあげていて、早く一刻も彼に会いたいと願った。



純粋に高校生のままの斗真に会いたいと。







『斗真さんの一家、引っ越したらしいわ。どうやら、お父さんが出世が決まったらしくって異動だって〜偉いわね〜』





そう、お母さんは私に言った



2月14日の夜。


斗真に振られた夜だ。

私は驚きさえ感情を表すことができなかった。




どうして、なんで言ってくれなかったの?



あの時の「ごめん」
はそういう意味なの?




斗真の本当の気持ちは何?


なんなの?


聞きたいことが山ほどで自分の小さな脳では解決できなくなっていって...




「どうしてっ!?」




夢中で家を飛び出した私は、斗真の家へ走った。



とにかく会いたくて

行かないでって言いたくて。









「...あら、空実ちゃん?」





コートを羽織るのも忘れた私は、斗真の家の前で待ちぼうけでいた。



このままインターホンを押してもいいだろうか。

迷惑って思われるんじゃないかって。





「おばさん。」



買い物袋を下げた
斗真のお母さん...おばさんが私に声をかけたとき、

何故か、心の緊張が溶けたように気がした。




「どうしたの?寒いでしょ?どうしてここにいるの?」



家の鍵を鞄から取り出しながら
おばさんは私に訪ねた。



「ぇ.....いや。」




その日は断じて、決して、おばさんは家に入ってなんか口にはしなかった。


いつもは......強引なほどに家の中へ招き入れてくれるのに。




「ごめんなさいね。この土日挟んだら出て行くのよ...だから」





だから、もう斗真と関わらないで?




「おばさん.......」



そんなの、反則すぎるよ。



「ごめんなさいね。いつも空実ちゃんには仲の良い女の子として遊んでもらったのに。」




どうして、こんな子供の私の前で




「だいじょうぶ...です。だから泣かないでください。」




涙を流して演技なんかして恥ずかしくないの?





私と斗真をそんなに離したい?



「本当に...斗真には...その、もっと違う子と仲良くしてもらいたいの。」



ただただ、私は斗真と不釣り合いだ。

一緒にいるなと言われているようなものだ。


はっきり言えばいいのに、斗真と空実ちゃんをくっつけるなんて恥だってさ。

だけど、そんなの言えないんだよね?


私だって、おばさんにも斗真にも
目の前にしたら何も言葉に出てこない。



「わたし、斗真との事はもう........あ、引越しおめでとうございます。」





震えていた。



手も体も言葉も、悔しくて


なんで私と斗真はこう





うまくいかないの。






よく言われた。


小さい頃。



私の親は私に対して、


城田斗真とは『仲のいい男友達』


で止めとけって。



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