近未来少年少女



『……もう一つだけ質問していい?』

俺はゲンタに聞いた

“いいよ”と返ってきた返事を聞いて、俺はゴクリと唾を飲む


ゲンタはこの世界に居る時間が長い

リーダーが一年、その二ヶ月後に来たのがゲンタ


つまり10ヶ月ここで生活をしている事になる

ゲンタはたぶん…相当な記憶を失っていると思う


ほとんどの人が自分の記憶がなくなっている事に気付かない、でも………


『ゲンタはあっちの世界に…元の世界に大切な人は居なかった?』


この質問もかなり無謀だ


俺でさえ薄れていってるのに、ゲンタが元の世界の事を覚えている訳がない

だけど、どうしても聞きたかった


『うーん分からない』

考えるようにゲンタが答えた、しかし『でも…』とまだ何か続きがあるみたいだ


『大切な人が居たら俺はこっちの世界には来てないんじゃないかな』

俺は胸が痛かった



この世界に来て辛い事、悲しい事を忘れて

心から夢の国と
信じている住人達


だけど……いくら忘れても、いくら思い出が消えようと

痛みや苦しさから逃げて来たという事実は、決して忘れる事はない


ゲンタは大切な人が居たらここには来ていないと言ったけど


本当にそうなのだろうか?

例え居なかったとしても、これから出会う人だっている

でもここに居たら………


これから出会うはずだった人にさえ会う事は出来ない


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