近未来少年少女

…………………
………


『でも私は全然ユウキの頼りにならないけどね』

この沈黙を破ったのはカオリだった


『………そんな事ないよ』

『え?』

俺は笑ってこう言った


『これから話す事聞いてくれる?』

……………………
……………

“これから話す事”

それは今ある俺の記憶

つまり今まで生きてきた全ての事

全部を忘れてしまう前に誰かに話せば、その人の記憶に残れると知った

カオリがいつか親に捨てられたと言う事実を忘れても俺が覚えている

その痛みと一緒に

だから俺も大切な事を忘れてしまう前に話したい

どうでもいい事、ちっぽけな事、笑われるような事、何でもいいから思い出せる全てを…………………
…………………
……

カオリは向こうの世界の俺を知っている

だからなんとなく他の人とは違う安心感があった

それに高校生活の事、今振り返れば楽しい事ばかりだった

なのに……将来の事や進路の事に不安を感じて高校生活を………

いや、あの頃の自分を捨ててしまった俺は……………

なんて馬鹿だったんだろう

こんな事今さら思っても仕方ないのに


俺がカオリに全てを話すにはもう一つ訳がある、それは…………


“フク”

もしも……もしもあいつを忘れてしまう日が来たら…………

なんて事を考えたら、どうしようもないぐらい悲しくて……

でも、せめてカオリの記憶の中に“フク”が居て欲しい

カオリもフクを忘れても、俺の記憶に居たフクは忘れないだろうー…

そう思えば前に進める

この世界の事をもっともっと調べられる


それと引き換えに記憶がなくなるスピードが早くなったとしても

カオリが覚えていてくれたらそれでいい



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