近未来少年少女


『ごめんなユウキ。お母さん居なくて寂しいだろ?』

机に並べられたおかずに手をつけながら、正面に座るお父さんは言った


『ううん、寂しくないよ!』

そう笑顔で返してもお父さんは“ごめんな”と謝った

“不景気”とか“お金が厳しい”とか難しい事は分からないけど………

たぶんお父さんは自分のせいだと思ってる

お母さんが夜も働いてくれてる事、それで俺が寂しい思いをしてるって


“ううん、寂しくないよ!”

そう言ったのは本心だった

お母さんとあまり話せないのは嫌だけど、その代わりお父さんとたくさん話せるから全然寂しくはない


お父さんはいつも俺の話しを聞いてくれるし、優しくしてくれる

“お母さんとお父さん
どっちが好き?”

昔誰かに聞かれた時、俺は“どっちも好き”と答えた

でも、もし今聞かれたら…………

俺はたぶん…………
…………………


少し重たい空気の中、お父さんが思い出したように口を開いた


『明日どこか行きたい所はあるか?』

『え?』

思わずご飯を食べていた箸が止まる

明日は土曜日で学校は休みだけど、お父さんは……

俺の言いたい事が分かったのか、お父さんは笑って


『明日仕事が休みになったんだ。だからユウキが行きたい所どこでも連れていってやるぞ!』と張り切った声を出した


その言葉を聞いて、俺は目を輝かせた

『あ、明日までに考えておく!!』

そう声を張り上げて答えた

俺のテンションは一気に上がり、ルンルン気分で残りのご飯を食べた

そんな様子をお父さんも嬉しそうに見つめていた



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