近未来少年少女



お父さんは俺の頭を撫でて、

『サッカーはどうだ?また教えてやるからな』と笑って言った

その手は暖かくて切なくなった


今は俺より自分の方が大変なくせに…なんで……なんでいつもそんなに優しいの……

俺は言わずにはいられなかった


『ねぇお父さん…』


『ん?なんだ?』



『もしお母さんと離婚したら俺はお父さんに付いていくからね』


お母さんの秘密事とか、お父さんの仕事の事とか、喧嘩してる理由とか、そんな事に口を出すつもりはない

でもこれが今思う事で、自分なりに考えた答え

お父さんは微かに動揺した素振りを見せた

でもすぐに一呼吸置いて、
『離婚なんてしないし、お前は何にも心配する事ないんだよ』と言った


“離婚”なんて言葉、俺が言っちゃいけなかったのかもしれない

ただ……ただ俺が嫌だった事はお父さんが責められる事


お母さんが男の人と電話してる姿を見るより、ずっとずっと嫌だったんだ





俺はこの時本気で思ってた

もしこの先何かがあったとしたら、俺はお父さんを選ぶって………



本気でそう思ってたのに



これから訪れる運命は、
全く真逆の方向へと進んで行くー…




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