近未来少年少女



僕には無理って……

『いや、俺にも無理だと思うよ』


『無理じゃない』

…………?
ミノルが珍しく食いついて来るから、少しだけ疑問を感じた


『なんで俺は大丈夫でミノルは無理なの?』

広げる話しではないと思ったけど、なぜか気になった

ミノルは少し間を空けた後、

『だって僕には壁があるから』

そう、うつ向いて答えた


『か、壁……?』


『うん。同情っていう壁がある』

同情の壁………?俺はミノルの言っている意味が理解できなかった

ミノルはそれを説明するように言った


『僕には常に可哀想って言葉が付いて回る。何をしても、何を言っても、どこに行ってもね』


ミノルが同情とか可哀想とか、そんな言葉を口にしたのは初めてで……

俺は何も言えなくなった


本当に今日のミノルは珍しい事だらけで、ベラベラと喋る性格じゃないのにその口は止まらなかった


『僕が言う言葉の前には可哀想が前提にあるから返ってくる言葉も同情の塊でしない』


『…………』


『誰も本心なんて言わないし全て偽りの言葉。それが僕の為だと思ってるからね』


俺はその言葉にハッとした
俺もお父さんの為だからと本心を言えずにいるから


『ユウキのお父さんだって嘘を付かれていい気分はしてないと思うよ』

ミノルは自分自身の経験を重ね、俺を正しい道に導こうとしていた


『…で…でも、お父さんは俺が嘘を付いてる事すら気付いてないよ…』


『ユウキこれだけは言っておくね。平気で嘘を付くのは大人、嘘を付かれた時知らない顔が出来るのも大人だよ』


知らない顔……ま、まさかお父さんが?いやいや…


『き、気付いてる訳ないよ…』

俺は動揺して答えた


『じゃぁユウキはまたお父さん嘘を重ていくの?』

『……………』


『嘘ってね…重ねれば重ねる程何とも思わなくいくんだよ。平気な顔で嘘をつける人間にユウキはなって欲しくない』



< 435 / 599 >

この作品をシェア

pagetop