近未来少年少女



“ミノルはお父さんの事が嫌いなの?”

前に聞いた事がある

答えは予想通り“うん”だった

だから今日は違う質問をしてみる


『ミノルのお父さんはどんな人?』


俺は良く家の事をミノルに相談するけど、ミノルはあまり語りたがらない

だからいつもミノルの本心に近付けずにいた

俺の質問にミノルは一言、
『ずるい人』と言った


『ずるいって……なにが?』

俺は恐る恐る聞いた

ミノルは一呼吸置いて、ゆっくりと口を開いた


『ずっと僕から逃げてるから』



この瞬間、俺は不謹慎だけど嬉しかった

この答えがミノルの本心だと分かったから

でも全然足りない

まだミノルの心にはたくさんの“詰まり”がある


それを少しでもほぐしてあげたい、そう思った

俺は次に自分でも驚く言葉を口にした


『じゃ……俺をお父さんだと思って何か言ってよ』


『え?』


『なんでもいいよ。今までの不満でも愚痴でもなんでも、何か一つでもいいから俺にぶつけてよ』


俺の事をお父さんだと思えなんて……無理が有りすぎるかな

ってか流石におせっかいだよな……


“別に言いたい事なんてないよ”

ミノルは笑ってそう返してくると思った

いや、いつもなら絶対にそう言うはずだった

だけど今日のミノルは少しだけ“らしく”ない


熱く語ったり感情的になったり、ミノルの口からお父さんの話題が出る事も………

全部ミノルらしくない事だった


だから“俺の事をお父さんだと思って何か言ってよ”なんて、無理過ぎる話しにミノルは真剣に答えたんだと思う



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