近未来少年少女



『このボールは俺とお父さんを繋ぐものだけど……』

『?』


『このボールは俺とお前を繋ぐものでもあるんだよ』

いつだって俺とミノルの間にはサッカーボールがあって

“一緒にサッカーやらない?”

俺達の始まりはこのボールだった


サッカーボールは俺とミノルを繋ぐもの、そして

お父さんに教えてもらった絆

俺はたくさんこのボールに救ってもらって、たくさんの思い出がある

だからこそ…少し辛い


お父さんとの思い出が詰まったボールを持っているのが辛い

俺は弱いから………

どうしてもボールを見ると現実から逃げたくなる


俺はお母さんを守ると決めた

だからもう揺るぎたくない

俺の重い決意とボールを差し出す手が震えているのをミノルは気付いていた


『いいの……?』

ミノルの手が微かに動く


『いいよ』

ミノルは俺の目を見つめながら…ボールに触った


サッカーボールが手から離れた瞬間、ふっと力が抜けた

ミノルはボールを抱き締め、言った



『ユウキの気持ちは受け取るけど、サッカーボールは受け取れない』


『!?』


『僕は預かるだけだよ。ユウキが強くなれる日まで』

やっぱりミノルには全てを見透かされていた


ボールを見るとお父さんを思い出してしまうから……俺は持っている事できない

たったそれだけの事


でもこのボールが俺とミノルを繋ぐのは本当だよ


ミノルがボールを持っていてくれる限り、どこに居たって繋がっていられる気がするから


『これで僕はたくさん練習する。それでいつかユウキみたいに上手くなりたいな』

ミノルが笑った



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